兵庫医科大学 医学部 一般選抜 数学の解説(2025年度)|全15問の考え方

2025年度 兵庫医科大学 医学部 一般選抜A(4科目型)・一般選抜B(高大接続型)の数学、全15問の解説です。答えだけでなく、各設問の下に「なぜその一手を思いつくのか」を1ステップずつ言葉にしたものを、折りたたみで付けています。まず自分で説明してみてから開いてください。

問題文は掲載していません。お手元に問題を用意してご覧ください。各設問の解答は、その問題を見ながら読む前提で書いています。なお数学は3大問すべてに「途中の式や考え方等も記入すること」と指定があり、試験時間は90分、配点は150点です(一般選抜Bでは100点に換算されます)。

目次

第1問 小問集合

(1) 底の異なる対数不等式

真数条件より x > 0 かつ x ≠ 1。底の変換公式から

$\displaystyle \log_{4}|x – 1| = \frac{\log_{2}|x – 1|}{2}$

なので、両辺を2倍すると

$\displaystyle \log_{2}|x – 1| + 4 > 2\log_{2}x$

4 = log216、2log2x = log2x2 だから

$\displaystyle \log_{2}16|x – 1| > \log_{2}x^{2}$

底は 2 > 1 なので、真数の大小がそのまま移って 16|x − 1| > x2

(i) x > 1 のとき 16(x − 1) > x2、すなわち x2 − 16x + 16 < 0 だから

$\displaystyle 8 – 4\sqrt{3} < x < 8 + 4\sqrt{3}$

4$\sqrt{3}$ = $\sqrt{48}$ < $\sqrt{49}$ = 7 より 8 − 4$\sqrt{3}$ > 1 なので、この範囲はすべて x > 1 を満たす。

(ii) 0 < x < 1 のとき 16(1 − x) > x2、すなわち x2 + 16x − 16 < 0 だから

$\displaystyle -8 – 4\sqrt{5} < x < -8 + 4\sqrt{5}$

4$\sqrt{5}$ = $\sqrt{80}$ < $\sqrt{81}$ = 9 より 4$\sqrt{5}$ − 8 < 1 なので、0 < x < 1 との共通部分は 0 < x < 4$\sqrt{5}$ − 8。

$\displaystyle 0 < x < 4\sqrt{5} - 8,\quad 8 - 4\sqrt{3} < x < 8 + 4\sqrt{3}$
ステップごとの考え方を見る(7ステップ)
  1. 知識
    $x > 0,\quad x \neq 1$
    真数は正でなければならないので、x > 0 と |x − 1| > 0 を先に出しておく。最後に共通部分をとるときに使う。
  2. 差がつくポイント判断
    $\log_{4}|x – 1| = \frac{\log_{2}|x – 1|}{2}$
    底が4と2で違うことに気づき、底の変換公式で2にそろえる。底が違うままでは足すことも比べることもできない。ここがそろえば、残りは対数の計算と2次不等式だけになる。
  3. 変形
    $\log_{2}16|x – 1| > \log_{2}x^{2}$
    両辺を2倍し、4 を log216 に、2log2x を log2x2 に直して、両辺を1つの対数にまとめる。
  4. 知識
    $16|x – 1| > x^{2}$
    底が1より大きいときは、対数の大小と真数の大小が一致する。だから不等号の向きを変えずに真数だけの比較に移せる。底が1より小さければ向きが逆になる。
  5. 差がつくポイント判断
    $(i) x > 1\quad (ii) 0 < x < 1$
    絶対値を外すために2つの場合に分ける。x − 1 の符号で外し方が変わるので、1本の不等式を2本の作業に切り分ける。
  6. 計算
    $x^{2} – 16x + 16 < 0,\quad x^{2} + 16x - 16 < 0$
    それぞれ2次不等式を解く。解の公式を使うだけで、値は 8 ± 4$\sqrt{3}$ と −8 ± 4$\sqrt{5}$。
  7. 判断
    $4\sqrt{3} = \sqrt{48} < 7,\quad 4\sqrt{5} = \sqrt{80} < 9$
    出てきた境界が1より大きいか小さいかを確かめて、場合分けの条件との共通部分をとる。8 − 4$\sqrt{3}$ も 4$\sqrt{5}$ − 8 も1のすぐ近くにあるので、目分量では決まらない。ルートの中の整数どうしを比べれば暗算で済む。

(2) 微分方程式を満たす定数の決定

y は eax と sin bx の積なので、積の微分法を使う。

y ′ = eax(a sin bx + b cos bx)
y ″ = eax{(a2 − b2) sin bx + 2ab cos bx}

これらを y ″ − 2y ′ + 5y = 0 に代入し、eax は 0 にならないので割ると

(a2 − b2 − 2a + 5) sin bx
    + 2b(a − 1) cos bx = 0

b = 0 とすると y は恒等的に 0 となり、eax sin bx という形の関数を考える意味がなくなるので、題意より b ≠ 0 とする。このときすべての x で成り立つには、sin bx と cos bx それぞれの係数が 0 でなければならない。

2b(a − 1) = 0 より a = 1
a2 − b2 − 2a + 5 = 0 に a = 1 を入れて b2 = 4
$\displaystyle a = 1,\quad b = \pm2$
ステップごとの考え方を見る(5ステップ)
  1. 公式
    $y ′ = e^{ax}(a \sin bx + b \cos bx)$
    y は指数関数と三角関数のなので、積の微分法で微分する。eax でくくっておくと、次の微分が楽になる。
  2. 計算
    $y ″ = e^{ax}{(a^{2} – b^{2}) \sin bx + 2ab \cos bx}$
    もう一度微分する。ここで sin bx と cos bx について整理しておくのが要点で、あとの係数比較がそのまま使える形になる。
  3. 差がつくポイント判断
    $a^{2} – b^{2} – 2a + 5 = 0,\quad 2b(a – 1) = 0$
    「方程式を満たす」をすべての x で成り立つ恒等式と読みかえ、sin bx と cos bx の係数をそれぞれ 0 とおく。x の値を1つ決めて解く問題ではない、と気づけるかどうか。ここが決まれば、あとは a と b の連立方程式になる。
  4. 判断
    $b \neq 0\quad \to\quad a = 1$
    b で割るために b ≠ 0 を先に断る。b = 0 だと sin bx が 0 になり、掛け算なので y 全体が 0 になってしまう。そうなると与えられた関数の形を考える意味がなくなり、しかも a が何でも方程式が成り立ってしまって値が決まらない。だから題意からこの場合を除く。
  5. 計算
    $1 – b^{2} – 2 + 5 = 0\quad \to\quad b = \pm2$
    a = 1 をもう一方の式に代入して b2 = 4。b = 2 と b = −2 の両方が答えで、片方だけにしない。

(3) 和が20になる3つの整数の組の数

(a) 0以上の整数の場合

20個の丸を3つの組に分ける分け方の総数に等しい。丸20個と仕切り2本、合わせて22個を並べ、どこを仕切りにするかを選べばよいから

22C2 = $\frac{22 \times 21}{2}$ = 231 組

(b) 1以上の整数の場合

3つの文字からそれぞれ1を引くと、和は 20 − 3 = 17 になり、引いたあとはすべて0以上になる。よって(a)と同じ数え方で

19C2 = $\frac{19 \times 18}{2}$ = 171 組
(a) のステップを見る(3ステップ)
  1. 差がつくポイント判断
    丸20個 + 仕切り2本 の並べ方
    方程式の問題を、同じもの20個を3つの組に分ける並べ方に置きかえる。丸を1列に並べて仕切りを2本入れると、仕切りで区切られた3つのかたまりの個数がそのまま3つの文字の値になる。この言いかえができれば、残りは組合せの計算だけ。
  2. 公式
    ${}_{22}\mathrm{C}_{2}$
    丸と仕切りを合わせて22個。そのうち仕切りの位置2か所を選ぶ組合せなので 22C2。0が許されるので、仕切りが隣り合ってもよい。
  3. 計算
    $22 \times 21 \div 2 = 231$
    約分して231。
(b) のステップを見る(2ステップ)
  1. 差がつくポイント判断
    3つの文字から1ずつ引く → 和は 17
    「1以上」を「0以上」に移しかえる。あらかじめ各組に1個ずつ配ってしまえば、残りは0以上の問題になり、(a)で作った数え方がそのまま使える。新しい発想は要らない。
  2. 計算
    ${}_{19}\mathrm{C}_{2} = 171$
    和が17なので丸17個と仕切り2本で19個。引くのは3つの文字それぞれから1ずつ、つまり合計3。和が1しか減らないと勘違いすると、この先の数がすべてずれる。

(4) 条件式つき2変数の最大・最小

条件式から y = x − π/3 として、x だけの関数にする。

0 ≦ y < π から π/3 ≦ x < 4π/3 であり、もとの 0 ≦ x < π と合わせて

$\displaystyle \pi /3 \leqq x < \pi$

半角の公式で2乗を1次に下げると

$\displaystyle f(x) = \frac{1 – \cos2x}{2} + \frac{1 + \cos(2x – 2\pi /3)}{2}$

加法定理より cos(2x − 2π/3) = −(1/2)cos2x + ($\sqrt{3}$/2)sin2x だから

f(x)
= 1 + $\frac{\sqrt{3}}{4}$sin2x − $\frac{3}{4}$cos2x
= 1 + $\frac{\sqrt{3}}{2}$sin(2x − π/3)

π/3 ≦ x < π のとき π/3 ≦ 2x − π/3 < 5π/3 で、この範囲に π/2 と 3π/2 がどちらも入るから、sin は最大値1と最小値 −1 をともにとる。

2x − π/3 = π/2 のとき x = 5π/12
2x − π/3 = 3π/2 のとき x = 11π/12
最大値 $\frac{2 + \sqrt{3}}{2}$ (x = 5π/12)
最小値 $\frac{2 – \sqrt{3}}{2}$ (x = 11π/12)
ステップごとの考え方を見る(6ステップ)
  1. 差がつくポイント判断
    y = x − π/3 を代入して x だけの式にする
    変数が2つあっても、それらを結ぶ式が1本あれば片方を消せる。2変数のまま最大最小を考えようとすると手が止まる。条件式を見たら代入して1変数にする、が定石。
  2. 差がつくポイント判断
    $\pi /3 \leqq x < \pi$
    消した y が持っていた条件をx の条件に書きかえて拾い直す。y の範囲から π/3 ≦ x が出てきて、もとの x の範囲と重なる部分だけが残る。ここを飛ばすと、実際には取れない x まで動かすことになる。
  3. 公式
    $\sin^{2}x = \frac{1 – \cos2x}{2}$
    2乗のままでは合成できないので、半角の公式で次数を1に下げる。cos2y も同様に下げる。
  4. 変形
    $f(x) = 1 + \frac{\sqrt{3}}{2}\sin(2x – \pi /3)$
    加法定理で cos(2x − 2π/3) をばらし、sin2x と cos2x の式に整理してから合成する。三角関数が1つになれば、最大最小は sin の値域だけで決まる。
  5. 計算
    $\pi /3 \leqq 2x – \pi /3 < 5\pi /3$
    x の範囲を、合成後の角の範囲に直す。2倍して π/3 を引くだけ。
  6. 判断
    π/2 と 3π/2 がともに範囲内
    sin が1になる角と −1 になる角が、どちらもこの範囲に入っているかを確かめる。入っていなければ端の値が最大最小になるので、確かめずに ±1 と書くことはできない。

(5) 正方形と、その外側の直角三角形

A B C D E F 6 8

※ 実際の問題に図はありません。位置関係を示すためのオリジナルの図です。破線が求める線分 EF です。

解答1(座標を置く)

直角三角形なので三平方の定理より AB2 = 62 + 82、AB = 10。正方形の1辺も10。

A(0, 0)、B(10, 0) とし、正方形を y < 0 側、三角形を y > 0 側にとると、E は対角線の交点すなわち正方形の中心だから E(5, −5)。F(s, t)(t > 0)とすると

s2 + t2 = 36
(s − 10)2 + t2 = 64

辺々引くと t2 が消えて 20s − 100 = −28、s = 18/5。第1式に戻して t = 24/5。

EF2
= $\frac{7^{2} + 49^{2}}{25}$
= $\frac{2450}{25}$ = 98
$\displaystyle EF = 7\sqrt{2}$

解答2(円に内接する四角形とみる)

∠AFB = 90°。また正方形の対角線は直交するので ∠AEB = 90°。F は正方形の外側、E は内側にあって直線 AB について反対側にあるから、四角形 AFBE は向かい合う角の和が

$\displaystyle \angle AFB + \angle AEB = 90° + 90° = 180°$

となり、円に内接する。正方形の対角線は 10$\sqrt{2}$ で E はその中点だから AE = BE = 5$\sqrt{2}$。四角形 AFBE にトレミーの定理を使うと、対角線の積が向かい合う辺の積の和に等しいので

AB・FE = AF・BE + FB・EA
10 FE = 6・5$\sqrt{2}$ + 8・5$\sqrt{2}$ = 70$\sqrt{2}$

ゆえに EF = 7$\sqrt{2}$。

ステップごとの考え方を見る(2つの解き方・5ステップと4ステップ)

解答1(座標)のステップ

  1. 差がつくポイント判断
    A(0, 0), B(10, 0), 正方形は y < 0 側、F は y > 0 側
    角度を追いかけるのではなく、AB を x 軸に載せて座標で処理すると決める。同時に「三角形は正方形の外側」という条件を、AB をはさんで反対側という形で座標に落とす。ここが決まれば、あとは代入計算だけで EF まで届く。
  2. 公式
    $AB^{2} = 6^{2} + 8^{2},\quad AB = 10$
    三平方の定理で斜辺 AB を出す。AB は正方形の1辺でもあるので、ここで正方形の大きさが確定する。
  3. 知識
    $E(5, -5)$
    正方形の対角線の交点は正方形の中心にあたるので、A と C の中点として座標が出る。
  4. 計算
    $s = 18/5,\quad t = 24/5$
    F は A から6、B から8 の距離にある点。2つの式を辺々引くと t2 が消えて s が先に決まる。t > 0 としたので符号は正。
  5. 計算
    $EF^{2} = 98$
    2点間の距離の式に入れて EF = 7$\sqrt{2}$。

解答2(トレミーの定理)のステップ

  1. 差がつくポイント判断
    $\angle AFB = \angle AEB = 90°$
    直角が2つあることに気づく。1つは問題で与えられた直角三角形、もう1つは正方形の対角線が直交することから出る。この2つを別々の事実として眺めるのではなく、同じ線分 AB を見込む角として並べる。
  2. 差がつくポイント判断
    四角形 AFBE は円に内接する
    F と E は AB をはさんで反対側にあるので、四角形 AFBE の向かい合う角の和が 180° になる。これが、円に内接する四角形であることの条件そのもの。ここが言えて初めてトレミーの定理を使ってよいことになる。この一行を飛ばすと、以降の等式に根拠がなくなる。
  3. 知識
    $AE = BE = 5\sqrt{2}$
    正方形の1辺が10なので対角線は 10$\sqrt{2}$。E はその中点なので、中心から頂点までは半分の 5$\sqrt{2}$。
  4. 計算
    $10 FE = 6\cdot 5\sqrt{2} + 8\cdot 5\sqrt{2}$
    トレミーの定理は「対角線の積 = 向かい合う辺の積の和」。求めたい FE が対角線の側に来るよう、頂点を A → F → B → E の順に並べるのがこつ。EF = 7$\sqrt{2}$。

※ トレミーの定理は教科書では発展的な内容として扱われています。答案で使うときは、4点が同じ円周上にあることを必ず書き添えてください。

第2問 食塩水を移し替える操作と数列

(1) 最初にあった食塩の量の和

食塩の量は、食塩水の質量に濃度を掛けて100で割れば出る。

A:200 × a/100 = 2a(g)
B:300 × b/100 = 3b(g)
2a + 3b(g)
ステップごとの考え方を見る(2ステップ)
  1. 知識
    食塩の量 = 食塩水の質量 × 濃度 ÷ 100
    濃度がパーセントで与えられているので、100で割ってから掛ける。
  2. 計算
    $2a + 3b$
    2 と 3 という係数は、容器の200gと300gを100で割ったもの。この 2a + 3b という形が、このあと操作を何回繰り返しても変わらない量として効いてくる。最後の設問の答えにも顔を出す。

(2) 1回の操作を表す連立漸化式

操作を1回も行っていない状態を n = 0 とし、x0 = a、y0 = b と定める。操作の直前、A は200gで濃度 xn−1、B は300gで濃度 yn−1。A から100gを B に移すと、B は400gになり、含まれる食塩は 3yn−1 + xn−1(g)。よって混ぜたあとの B の濃度は

$\displaystyle \frac{x_{n-1} + 3y_{n-1}}{400} \times 100 = \frac{x_{n-1} + 3y_{n-1}}{4}$

ここから100gを取り出しても濃度は変わらないので、この値がそのまま yn になる。

$\displaystyle y_{n} = \frac{1}{4}x_{n-1} + \frac{3}{4}y_{n-1}$

A は、残った100g(濃度 xn−1)に濃度 yn の100gを加えて200gになる。等量の混合なので濃度は平均値。

xn
= $\frac{x_{n-1} + y_{n}}{2}$
= $\frac{5}{8}$xn−1 + $\frac{3}{8}$yn−1
ア = 5/8, イ = 3/8, ウ = 1/4, エ = 3/4
ステップごとの考え方を見る(6ステップ)
  1. 差がつくポイント判断
    「A から B へ移す」→「B から A へ戻す」の2段階に分ける
    ひとつながりに見える操作を、2つの段階に切り分けて順に追う。段階ごとに「何gになったか」「食塩は何g入っているか」を書き出せば、あとは濃度の計算だけになる。まとめて処理しようとすると式が立たない。
  2. 計算
    B は 400g、食塩は xn−1 + 3yn−1(g)
    移す100gに含まれる食塩は xn−1(g)。もとの 3yn−1 に足す。質量も 300 + 100 で400g。
  3. 差がつくポイント判断
    100gを戻しても B の濃度は変わらない
    よくかき混ぜたあとなら、どこをすくっても濃度は同じ。だから B の濃度は移した直後に確定し、戻す操作では変わらない。ここに気づかないと、戻したあとの B を300gとして立て直そうとして食塩の量が合わなくなる。
  4. 計算
    $x_{n} = \frac{x_{n-1} + y_{n}}{2}$
    A は同じ100gずつの混合なので、濃度はちょうど2つの平均になる。
  5. 変形
    $x_{n} = \frac{5}{8}x_{n-1} + \frac{3}{8}y_{n-1}$
    xn の式には yn が入っているので、先に求めた yn を代入して、1つ前の2つの濃度だけの式に直す。設問が求めている形に合わせる作業。
  6. 判断
    $5/8 + 3/8 = 1,\quad 1/4 + 3/4 = 1$
    濃度は混ぜた液体の加重平均なので、係数の和は必ず1になる。計算が合っているかの検算に使える。

(3) 食塩の量の和が変わらないことの証明

n 回の操作の後、A に含まれる食塩は 2xn(g)、B に含まれる食塩は 3yn(g)だから、和は 2xn + 3yn と表せる。(2) の漸化式を代入して、xn−1 と yn−1 の係数をそれぞれ計算すると

xn−1 の係数
= 2 × $\frac{5}{8}$ + 3 × $\frac{1}{4}$ = $\frac{5}{4}$ + $\frac{3}{4}$ = 2
yn−1 の係数
= 2 × $\frac{3}{8}$ + 3 × $\frac{3}{4}$ = $\frac{3}{4}$ + $\frac{9}{4}$ = 3

もとの係数 2 と 3 に戻るので

$\displaystyle 2x_{n} + 3y_{n} = 2x_{n-1} + 3y_{n-1}$

よって 2xn + 3yn は n によらず一定である。x0 = a、y0 = b とすれば、その値は 2a + 3b(g)。証明終わり

ステップごとの考え方を見る(4ステップ)
  1. 差がつくポイント判断
    食塩の量の和 = 2xn + 3yn
    示したい「食塩の量の和」を、まず濃度の式として書き表す。最初の設問で使った換算を、n 回後にもそのまま当てはめればよい。この形さえ立てば、あとは代入して計算するだけになる。
  2. 変形
    (2) の2式を代入する
    設問が「漸化式を使って示せ」と指定しているので、食塩の出入りがないから当然、という説明では答えにならない。指定された道具を実際に使う。
  3. 計算
    係数は 5/4 + 3/4 = 2, 3/4 + 9/4 = 3
    xn−1 と yn−1 の係数を計算すると、ちょうど2と3に戻る。これが「変わらない」ことの中身。
  4. 判断
    $2x_{n} + 3y_{n} = 2a + 3b$
    一定であることを示したら、その一定値まで書く。操作を始める前の値にさかのぼれば 2a + 3b。値を書かずに「一定である」で止めると、次の設問で使えない。

(4) 一般項を a, b, n で表す

解答1(保存される量で1変数にする)

(3) より 2xn−1 + 3yn−1 = 2a + 3b なので、yn−1 を xn−1 で表して xn の式に代入すると

xn = $\frac{3}{8}$xn−1 + $\frac{2a + 3b}{8}$

この形は、ある定数 α について xn − α = (3/8)(xn−1 − α) と書き直せる。α は α = (3/8)α + (2a + 3b)/8 を解いて

$\displaystyle \alpha = \frac{2a + 3b}{5}$

数列 {xn − α} は公比 3/8 の等比数列で、x0 = a より初項は a − α = 3(a − b)/5。

解答2(和と差をとる)

(2) の2式を辺々引くと xn − yn = (3/8)(xn−1 − yn−1) となり、公比 3/8、初項 a − b の等比数列になる。これと (3) の 2xn + 3yn = 2a + 3b を連立すれば、同じ答えが出る。特性方程式を使わずに済むぶん短い。

$\displaystyle x_{n} = \frac{2a + 3b}{5} + \frac{3(a – b)}{5}(3/8)^{n}$
$\displaystyle y_{n} = \frac{2a + 3b}{5} – \frac{2(a – b)}{5}(3/8)^{n}$

n = 0 を入れると x0 = a、y0 = b となり、初めの値と合う。

ステップごとの考え方を見る(2つの解き方・6ステップと4ステップ)

解答1(保存される量で1変数にする)のステップ

  1. 差がつくポイント判断
    2xn−1 + 3yn−1 = 2a + 3b を使って yn−1 を消す
    直前の設問で示した変わらない量を、道具として使う。2つの数列が絡み合った漸化式は、そのままでは解けない。片方を消せば、見慣れた1本の漸化式になる。証明問題が次の設問の準備になっている。
  2. 変形
    $x_{n} = \frac{3}{8}x_{n-1} + \frac{2a + 3b}{8}$
    代入して整理すると、xn−1 の定数倍に定数を足す形になる。a と b は最初に与えられた定数なので、文字が入っていても定数項として扱ってよい。
  3. 差がつくポイント判断
    $\alpha = \frac{3}{8}\alpha + \frac{2a + 3b}{8}$
    この形を見たら、定数 α をずらして等比数列に直す。xn と xn−1 を同じ文字 α に置きかえた方程式を解けば、ずらす量が求まる。α が出れば残りは等比数列の公式。
  4. 計算
    α = $\frac{2a + 3b}{5}$, 初項 $\frac{3(a – b)}{5}$
    α を求め、x0 = a から初項 a − α を計算する。分母をそろえて整理すると 3(a − b)/5。
  5. 判断
    yn は 2xn + 3yn = 2a + 3b から出す
    yn のために漸化式をもう一度解き直す必要はない。変わらない量にxn を入れれば、そのまま yn が求まる
  6. 判断
    n = 0 で a と b に戻る
    最初の値を入れて確かめる。指数が n か n − 1 かで迷ったときも、これで決まる。

解答2(和と差をとる)のステップ

  1. 差がつくポイント判断
    $x_{n} – y_{n} = \frac{3}{8}(x_{n-1} – y_{n-1})$
    2つの式を辺々引くと、差だけの式になることに気づく。2つの濃度を別々に追うのをやめて、差という1つの数列に注目すると、それが等比数列になっている。
  2. 公式
    $x_{n} – y_{n} = (a – b)(3/8)^{n}$
    公比 3/8、初項 x0 − y0 = a − b の等比数列として一般項を書く。
  3. 差がつくポイント判断
    差の式と、2xn + 3yn = 2a + 3b を連立
    差が分かっても、それだけでは2つの濃度は決まらない。和にあたる式がもう1本要るが、それは直前の設問がすでに用意してくれている。2本そろえば連立方程式。
  4. 計算
    $5x_{n} = (2a + 3b) + 3(a – b)(3/8)^{n}$
    連立を解いて xn と yn を取り出す。過程を書く指定があるので、どう足し引きしたかを1行残す。

(5) 操作を限りなく繰り返したときの濃度

公比は 3/8 で、0 < 3/8 < 1 だから n を大きくすると (3/8)n は 0 に近づく。よって xn、yn のどちらも定数項だけが残る。

A、B ともに $\frac{2a + 3b}{5}$(%)に近づく
ステップごとの考え方を見る(3ステップ)
  1. 知識
    $0 < 3/8 < 1\quad \to\quad (3/8)^{n} \to 0$
    等比数列は、公比の絶対値が1より小さいとき0に近づく。1以上なら発散するので、公比の大きさを確かめてから使う。
  2. 計算
    xn、yn ともに $\frac{2a + 3b}{5}$
    (3/8)n の付いた項が消え、残るのは定数項だけ。A と B で同じ値になる。
  3. 判断
    全体500gに食塩 2a + 3b(g)
    答えの意味を確かめる。操作を繰り返すと2つの容器の濃度は等しくなるので、食塩が全体に均一に散った状態になるはず。その濃度を計算すると同じ値になり、答えの筋が通る。

第3問 複素数平面と外心

(1) 3点が同一直線上にある条件

3点は相異なるので α ≠ 0、β ≠ 0。原点と2点が一直線上に並ぶことは、β が α の実数倍であること、つまり β/α が実数であることと同じ。

複素数が実数であることは、共役複素数と等しいことと同じだから

$\displaystyle \frac{\beta}{\alpha} = \frac{\overline{\beta}}{\alpha}$

α ≠ 0 なので分母を払って

α$\overline{\beta}$ = $\overline{\alpha}$β (α$\overline{\beta}$ − $\overline{\alpha}$β = 0)
ステップごとの考え方を見る(3ステップ)
  1. 差がつくポイント判断
    一直線上に並ぶ ⟺ β/α が実数
    図形の条件を、複素数の割り算が実数になるという条件に置きかえる。複素数で割ることは、大きさを変えて回すこと。実数倍だけなら回転しないので、原点から見て同じ向き(または真逆)に並ぶ。
  2. 知識
    z が実数 ⟺ z = $\overline{z}$
    実数は虚部が0なので、共役をとっても自分自身のまま。これが「実数である」を式で書く方法。
  3. 変形
    $\alpha \overline{\beta} = \overline{\alpha}\beta$
    分母を払って整理する。分母を払う前に α ≠ 0 を確かめておく。問題文に3点が相異なるとあるので、原点と A が別の点であることから言える。

(2) 外心を表す複素数

外心は3頂点から等距離にある点だから、C を表す複素数を γ とすると |γ| = |γ − α| = |γ − β|。

絶対値のままでは計算できないので、|z|2 = z$\overline{z}$ を使って2乗する。|γ|2 = |γ − α|2 より

γ$\overline{\gamma}$ = (γ − α)($\overline{\gamma}$ − $\overline{\alpha}$) すなわち $\overline{\alpha}$γ + α$\overline{\gamma}$ = α$\overline{\alpha}$ …①

同じようにして

$\displaystyle \overline{\beta}\gamma + \beta \overline{\gamma} = \beta \overline{\beta}\quad …②$

①と②を、γ と $\overline{\gamma}$ を未知数とする連立1次方程式とみる。① × β − ② × α とすると $\overline{\gamma}$ の項が消えて

$\displaystyle (\overline{\alpha}\beta – \alpha \overline{\beta})\gamma = \alpha \beta (\overline{\alpha} – \overline{\beta})$

3点は同一直線上にないので、(1) の条件が成り立たない、つまり $\overline{\alpha}$β − α$\overline{\beta}$ ≠ 0。よって

$\displaystyle \gamma = \frac{\alpha \beta (\overline{\alpha} – \overline{\beta})}{\overline{\alpha}\beta – \alpha \beta}$
ステップごとの考え方を見る(5ステップ)
  1. 差がつくポイント判断
    $|\gamma | = |\gamma – \alpha | = |\gamma – \beta |$
    外心という言葉を、3頂点からの距離が等しいという式に戻す。複素数平面では、2点間の距離は差の絶対値。外心の性質を思い出せれば、そのまま3本の等式になる。ここが立てば、残りは連立方程式を解く作業。
  2. 公式
    $|z|^{2} = z\overline{z}$
    絶対値が付いたままでは展開できないので、2乗して積の形に直す。複素数平面で距離を扱うときの基本の一手。
  3. 差がつくポイント判断
    γ と $\overline{\gamma}$ を2つの未知数とみる
    共役複素数を、独立した別の文字として扱う。そうすると①②は2文字の連立1次方程式になり、片方を消すという見慣れた作業に変わる。実部と虚部の2つを未知数に置くのと同じことをしている。
  4. 計算
    $(\overline{\alpha}\beta – \alpha \overline{\beta})\gamma = \alpha \beta (\overline{\alpha} – \overline{\beta})$
    係数をそろえて引き、$\overline{\gamma}$ を消す。① を β 倍、② を α 倍すると $\overline{\gamma}$ の係数がどちらも αβ になる。
  5. 判断
    分母 $\overline{\alpha}$β − α$\overline{\beta}$ ≠ 0
    割るためには分母が0でないことが要る。この式は(1)で求めた同一直線上の条件そのもので、今回は一直線上にないと書かれているから0にならない。前の設問が、ここで割ってよい根拠になっている。

(3)(a) 半直線どうしの回転角

β の偏角は、虚部を実部で割った値が tan にあたるので、3 ÷ $\sqrt{3}$ = $\sqrt{3}$。β は第1象限にあるから偏角は π/3。よって ∠AOB = π/3。

C は外心なので、O、A、B は C を中心とする同じ円周上にある。∠AOB はこの円の円周角であり、求める角はその同じ弧に対する中心角だから

中心角 = 2∠AOB = 2π/3

∠AOB = π/3 は π/2 より小さいので、中心角は π を超えず、指定された範囲にそのまま収まる。また β は α から見て反時計回りの側にあるので、回転の向きは正。

$\displaystyle \theta = 2\pi /3$
ステップごとの考え方を見る(4ステップ)
  1. 差がつくポイント判断
    O、A、B は C を中心とする同じ円周上にある
    C が外心であることから、3点が1つの円の上に乗っていると見て、円周角と中心角の関係に持ち込む。直前の設問で求めた γ の式に数値を入れて計算しにいくと、分数と根号の混じった値を扱うことになる。円の性質を使えば γ を求めずに済む。
  2. 計算
    $\angle AOB = \pi /3$
    α は正の実数なので偏角0。β の偏角は、虚部と実部の比から tan の値を読んで π/3。2つの偏角の差が ∠AOB。
  3. 公式
    中心角 = 2 × 円周角
    円周角の定理。同じ弧を見込む角は、中心から見ると円周上から見たときの2倍になる。この2倍の関係そのものに例外はない。
  4. 判断
    ∠AOB < π/2 かつ 向きは反時計回り
    答えの大きさと向きの両方を決める。∠AOB が鋭角なので中心角は π を超えず、指定された範囲に収まる。仮に ∠AOB が鈍角だと中心角が π を超えてしまい、指定の範囲に直すと符号が逆になる。向きは、β が α から反時計回り側にあることから正と決まる。

(3)(b) 回転してできる点が最も近づくとき

ω は絶対値が1で偏角が π/4 の複素数。

$\displaystyle \omega = \frac{\sqrt{2}}{2}(1 + i) = \cos(\pi /4) + i \sin(\pi /4)$

したがって ω を掛けることは π/4 だけ回すことにあたり、zn は C を中心とする半径 |α − γ| の円周上を、A から π/4 ずつ反時計回りに進む点である。

B もこの円周上にあり、(a) より A から B までの回転角は 2π/3 だから、β − γ = (α − γ)(cos(2π/3) + i sin(2π/3))。R = |α − γ| とおくと

|zn − β|
= R|ωn − (cos(2π/3) + i sin(2π/3))|
= 2R|sin(nπ/8 − π/3)|

よって距離が最小になるのは、nπ/4 が 2π/3 に最も近いとき。45°の倍数のうち120°に最も近いのは135°(差15°)で、次は90°(差30°)だから n = 3。

また ω8 = 1 なので zn は n について周期8である。

n = 8k + 3(k は整数)
ステップごとの考え方を見る(5ステップ)
  1. 差がつくポイント判断
    $\omega = \cos(\pi /4) + i \sin(\pi /4)$
    与えられた ω を極形式に読みかえて、回転を表す数だと見抜く。絶対値が1なので大きさを変えず、向きだけを π/4 変える。すると zn は、A を出発して円周上を少しずつ回っていく点の列だと分かる。
  2. 差がつくポイント判断
    $\beta – \gamma = (\alpha – \gamma )(\cos(2\pi /3) + i \sin(2\pi /3))$
    B も同じ円周上にあり、A から B までの回転角は直前の設問で求めた 2π/3。これで β も「中心から見て A を何度回したか」の形で書ける。両方を同じ形にそろえると、引いたときに中心 γ が消え、半径 α − γ が共通因数としてくくり出せる。
  3. 差がつくポイント判断
    $|z_{n} – \beta | = 2R|\sin(n\pi /8 – \pi /3)|$
    距離を角度だけの式に書きかえる。同じ円周上の2点の距離は、2点が中心に張る角で決まる。半径 R は n によらない定数なので大小の比較には効かず、残った角の部分だけを見ればよくなる。9通りの複素数の引き算が、角の比較に変わる。
  4. 計算
    135° との差15° < 90° との差30°
    45°の倍数を並べて、120°に最も近いものを探す。135°と90°だけ比べれば足りる。
  5. 判断
    $\omega ^{8} = 1\quad \to\quad n = 8k + 3$
    π/4 ずつ回すと8回で1周するので、zn8個の点を繰り返す。設問が整数 n の範囲で聞いているので、n = 3 だけでは足りず、8ずつ離れた n もすべて答えになる。
この問題の外でも使う知識

同じ円周上にある2点を結ぶ線分(弦)の長さは、半径と、その2点が中心に張る角だけで決まります。

C P Q φ R R sin(φ/2) R sin(φ/2)

※ 弦の長さを説明するためのオリジナルの図です。

中心 C から P、Q へ引いた2本はどちらも半径なので、三角形 CPQ は二等辺三角形です。頂点から底辺に垂線を下ろすと、頂角も底辺もちょうど半分に割れて、直角三角形が2つできます。斜辺が R、中心側の角が φ/2 なので、その向かい側の辺は R sin(φ/2)。これが弦の半分にあたるので、弦の長さは 2R sin(φ/2) になります。

この設問では φ が nπ/4 − 2π/3 にあたります。その半分が nπ/8 − π/3 です。

全体を通して見える3つのこと

15問すべてに答えを出したあとで、設問どうしを並べて比べてみると、次の3つが見えてきました。

  • 前に求めた結果が、後の設問を解く道具になっている場面が5か所ありました。「差がつくポイント」として挙げた24か所のうちの、およそ5か所に1か所です。変わらない量を示す証明が次の一般項を出すための材料になっていたり、求めた回転角がそのまま距離の比較に使われていたりします。これらを使わずに解こうとすると、どれも計算量が数倍に膨らみました
  • 式の形を見て、どの公式や知識を持ち出すかを決める場面が11か所ありました。最も多い種類です。底がそろっていない対数、恒等式として読むべき等式、外心という言葉、絶対値が1の複素数。どれも計算そのものは基本的で、手が止まるとすれば、その手前の判断の方でした
  • 3つの大問すべてに、途中の式や考え方も書くよう指定がありました。実際に解いてみると、割ってよい理由や、場合分けの条件と重ねた結果など、答えを出すだけなら飛ばせるけれど、書いておきたい行が、どの大問にも出てきました

本記事はうかるレシピ編集長 松原なおきが作成した非公式の解説です。大学が公表している解答例ではありません。解答は編集部が独自に作成したもので、公表解答例と照合したものではありません。全15問について、別に作成した解答との突き合わせと、計算機による検算を行っています。
試験時間・配点・出題範囲は、兵庫医科大学が公表している2025年度学生募集要項(医学部医学科)に拠りました。数学は一般選抜A(4科目型)と一般選抜B(高大接続型)の共通問題です。

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